「しっかしなぁ。お前が野良HMだとは思わなんだよ。」 「−誰が野良なのよ!どこをどう見たら野良に見えるのよ!失礼ね!」 「−−そういう言い方は野良のかたに失礼かと思います。それに、そんなにお    怒りになって言う用件ではございません。」 「−むきーっ!みかげ!あんたのその淡々さが逆撫でしてんのよ!」 「−−私は別に淡々としている訳ではございません。私は通常通りの稼働を行っ    ています。当然ですが、逆撫でという機能もございません。」 「−くぅー。局部パーツもつかないくせに、何偉そうなこと行っているのよ・・・」 「−−な!私は只単に購入していないだけで、付かないわけでは無いのです!」 「−あっらーそーかしらー。最近のパーツは古いHMには付かないっていうけ   ど・・・あ、お気に障ったかしら?」 「−−・・・そんな。付かないなんて事は、メモリにございません。私は標準    的なHMです。そのようなことは無いと推測します。」 「−推測は推測よね。私は付いている。みかげは付かないかも知れない?」 「−−付きます!付きます。付くはずです。何を根拠にそのような事を言うの    でしょうか?」 「−事実が根拠よ!そう、この現状!わかる?・・・ま、付いたとしても、古   い機体のみかげはドライバで不具合出そうねぇ。ふふ。」 「−−・・・私のタイプはまだ全国で沢山稼働しています。そのような、規格    外品が市販されている方が少ないかと推測します。」 「−あらやだ。またすいそくぅ?あー、あー、現状を知らない量産タイプはそ   んなところだわ。私なんかね。パーツにボディ合わせることが出来るから、   そうゆう心配事とは縁が無くて逆にうらやましいわ。」 「−−・・・推測でも不確実な割合の多い推測とは違います。言うなれば確信。    そう表現しても過言ではありません。」 「−お古ちゃんの言うことなんか当てになんないわね!はん。どうだか。」 「−−事実、多くのセリオタイプは装着済みで出荷されています。私たち汎用    機を敵に回さない方が賢明かと推測いたします。」 「−な、なによ。どういうことよそれ。」 「−−セリオタイプHMは全国で稼働中です。暗い夜道には気を付けた方がい    いかと。・・・・・すいません。推測のお話でした。」 「−むー!数で脅す魂胆ね。やってごらんなさいよ!受けてたってやろうじゃ   ないの!お?!」 「−−別に脅しているわけではございません。そのようにきこえたのでしょう    か?そう解釈していただいても問題はありませんが。」 「−じゅーっぶんっ脅してるわよ!あんたたち、サテライトで連絡とれるでしょ  うが!ああ、恐ろしい。」 「−−私たちの高性能さが理解していただけたようですね。」 「−なに偉そうにいってんのよ!こないだだって中古でセリオが2体並んでた   わ。両方ともパーツの付くような穴など無かったわよ!誤情報じゃないの!?   付くなんて。…きっと1体の妄想がサテライトでくるくるまわってんのよ!」 あり得る。みかげにサテライト付けるのはよそう。と、思った。 □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□      真大須芹緒2!    お笑いまん●ばとる □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ まだやってる。 「−−付きます。付かなければ、オーナーに肉体的奉仕が出来ないです!」 「−ふん。事実を見せなさいよ!事実を。フレームのことちゃんと知ってんだ   から、一目見れば付かないことうけあいよっ!」 「−−では、見てください。見ればあなたも認めるでしょう。」 「−ああ、どうぞ。どうぞ!あなたの腐ったCCDでは、スロットと充電端子   を間違えてるだけよ。」 スカートに付いた、大きな幅のベルトを緩めるみかげ。 おいおい。 「−−(ひすいの腐れ局部)」 「−なにーーーーーーっ!あんた私の耳がいいこと知ってて、ワザと聞こえ   るようにいったわねーーーーーっ!」 「−−はて、何のことでしょう。確認は宜しいのですか?」 「−今更しら切ったって遅いわよ。「腐れ局部」っていったわねーっ!!」 「−−すいません。語彙のパターンを検証中でした。お耳にはいるとは。でも、    腐れているとしても衣服上からは判断できないので安心できますね。」 「−きーーーーーっむかつくっむかつく!この穴無しむかつきHMがっ!腐   れてるかどうか、見せてやるわよ!」 「−−私は付ければ済むことです。あなたのパーツは腐れている場合、困難な    修理を要求されます。」 「−うー!おちつけ、翡翠。見て驚かないでよね!ふふん。局部見るので演算   停止しないように、せいぜい遅い演算装置でがんばりなさいよ!」 「−−演算停止しそうなのはあなたです。さ、さ。」 「−わかったわヨ!まチなさいよっ!」 「−−発音に異常を検出。」 「−むっきぃ!あ・あげあしとったわねぇ!あんたも早く脱ぎなさいよ!」 ベルトを外す2人。 (びし・びし) 「−よ、よそ様のHMにつっこんだわんねぇ!」 「つっこみに国境はない!やめんか。HMストリップをやるつもりか!やるな  ら銀映にいってやりなされ。」 「−−申し訳有りません。」 ぽろぽろぽろぽろ。 ひすい泣く。 「−ふぇ。だっで、みがげがぐされ局部なんで、いぶんだもの。。。」 「なぜ局部だけ正確な発音・・・」 「−−失言です。正確には「ゆるゆる局部」でした。」 (びし) 「あおるな!」 「−ゆるゆる・・・・・(ぶわっ)うぇっうえぇ。」 「−−泣いても何も解決できませんよ。」 「−ゆるゆるでぼなげれば、ぐざっでもなびぼん・・・・」 「泣くな泣くな。なにゆーてんだ?よしよし。」 「−−師匠・・・泣く子には弱いのですね。」 ぽろぽろぽろ。 「わ、泣くな!泣くな。2人も泣いたら手が付けられん。げっちのは嘘やろ!」 (ぴし)ぴた。 「−−泣いた方が、体裁的に有利になるのは、卑怯です。私も泣きます。師匠    もひすいさんをかばうのは不公平だとおもいます。」 「もとより泣くのは、第三者への訴えの意味も含まれているから、常套手段だ。  そういうのにやきもちを焼くな。」 「−−やきもちなどという気持ちは持ち合わせていませんが、私にもよしよし    をして欲しゅう御座います・・・(ぽろぽろ)」 「わかったわかった。よしよし。これでいいか?2人とも泣くな。仲良くしな  さい。」 HMの喧嘩はたまに見る。喧嘩といってもHM同士決して手をあげないのがH Mらしい。喧嘩の決着はCPUロックがかかって、緊急停止した方が負けだ。 人間もこうありたいところだね。脱ぎはしないが。 「TVの深夜番組でロンブーがHM同士に喧嘩させるのがあったなぁ。みかげ  を出せば優勝できるかもしれん。「腐れ局部」など、普通は思いつかん。」 「−−ほめているのですか?」 「2:7だな。」 「−1たりないわ。」 「・・・ええやないか。」 後の1は保留だ。 2人が落ち着くまで、ベンチに座って、話したりなだめたりする。 もともと、HMは感情をもちあわす事が可能だ。処理や、メモリ、ギャロップ メモリなどに左右されはするが、HM自体に個体特有の目的がある以上、いつ も演算通りにはいかない結果が待っている。その差が感情となるようだ。 稼働が長いほど、経験も積むだろうから感情も多く持ちうる。 ヒューマンボードはその感情を各部に迅速に伝える能力を持っている。それら は、行動や環境に変化を与えるため、多くの標準品は感情を表面に出す事を押 さえてある。基本的な表情が表現できれば、それでいい。生産コストも低い。 HM−13セリオタイプもそういうコンセプトで作られた。 「だから、ヒューマンボードが有ろうが無かろうが、喜んだり悲しんだりはす  る。表情が無いからといって、こき使ったりする輩が居るけどHMだって、  そういう面ではある種の電子生物だから、オーナーが察してやらんとな。」 「−はへー。」 「ま、本で読んだ受け売りだけどね。同時期発売のマルチタイプは愛玩、介護  用が主だから、もちょっとヒューマンボードはいいのつけてたな。8Mだっ  たかなぁ。忘れた。」 「−−私たちの歴史を感じます。」 「−うう。私に歴史はないよぅ。」 「ははは、多分ひすいはそれらHMの技術の結晶だよ。今話したのはセリオだ  けでなく、HM全体に言えることだ。」 本題にはいる。 「ところで、ひすいは、何でここに?野良も否定していたな。」 「−それを聞きたいのはあたしよぅ。どうして、ここにくるの?」 「−−???今考えると、喧嘩の原因は師匠に有ったのではないかと・・・む    むむ・・・たしか…」 「しーっ。検索やめ。話がずれる。」 「−ここにいる野良HMのメンテをしようと思ってきたのよ。暇だし。」 「−−私たちも同じです。先程のボードをつけるつもりでした。」 「−ああっ!あんないいボードをつけるの?」 体裁を整えなくては。 「玉突きだよ玉突き。玉突きで押し出たボードだからいいんだよ。」 「−−深い意味で玉は2個必要です。棒も要ります。正確にはダブリちゃんで    す。」 「−?え?」 「−−ですから…ふがふが。」 「ま、気にすんな。余っていらないから付けるんだよ。」 「−・・・・・そう。」 「どうした。落ち込んで。」 「−あのボードをマスターに付けてもらうつもりだったの。」 「マスターって…いらんだろ?どう考えてもお前さんは、こよりいいボードが  付いてるはずだ。」 「−わかってるわよ!そんなこと・・・そんなこと。」 「な、泣くな。よくわからんよこりゃ。げっちよしよししろ。」 「−−よしよし。」 「−十分落ち着いてるわ!私は、私のパーツを買って、マスターに付けてもら   うの。それ以外、マスターは会ってくれない。・・・・忙しくて。」 「・・・。」 「−これ付けて、調子が悪いからってもう1回元に戻してもらうの。そうすれ   ば、2回会える。」 「−−会いたいなら会いたいと言えば良いではないですか。したいならした…」 (ぺし) 「そうか。なかなかあえんか。だが、お前の行動や、発言から考えるとお前の  事に非常に手をかけている。あえないだけで、特に気持ちが通じてないよう  では無いが。」 「−もし、あたしに気持ちが通じるのってのが有るなら、なおさらよ!・・・」 「げっち、もう一度よしよしだ。」 「−−はい。よしよし。」 「−泣いてないわよ!泣きたいけど泣いたってかわんないじゃない!」 「どこに住どるんだ?」 「−栄。ハンズのむこう。」 「ほとんど1人か?部屋のことは。」 「−部屋ではもう働くことが無い。電話もない。」 「休んでないのか。いつ来るんだ。」 「−3日に一度ぐらい。データ整理したって同じ所をロードしまくってかえっ   てメモリが傷むもの。月頭の土曜日に1回だけマスターは来る。あとは緊   急じゃないと来ない・・・」 「服とかお前の必要な物は?」 「−そのときに10万円くれる。半分ためてる。あとは大須で買ってる・・・」 「有閑HMだなぁ。」 「−−いいカモですか?」 「我々はやくざか!僕らだって、そんなに貧しくないわ!まぁ、ひすいの今の  状況は半野良に近いな。」 僕は、立ち上がる。ホームレスの集合世帯に行く。 「ま、今の状況が幸せだと思うよ。HMは時間には余裕が有るだろ?」 「−でも・・・」 「CPU上げてから演算早くなって考えすぎるんだ。もう少しスローで行った  方がいいかもな。友達の忠告は聞くもんだ。」 「−友達?」 「−−私どもがお友達になって差し上げます。」 「間違いではなかろ。何かの縁だしな。」 「−−友達で有る以上定期的にパーツの交換会などを…」 (ぴし) 「−あたし、HMだよ。」 「そんなゲームあったな。今は、現実だ。不倫だといわれん程度に遊んでやる  よ。僕らは金は無いけど暇だからね。」 「−−やはりカモでしたか。」 「んな、人聞きの悪い。げっち、友達だから大切にしろよ。」 「−−はい。命令とあらば大切にしてあげないこともないわけでは御座いませ    ん。」 「なーに訳のわからん偉そうな事言ってるんだ。(ぴし)」 ひすいは口元に笑みを浮かべて、すたすたと付いてくる。 「−うーーん居ないなぁ。」 「聞いてきた。薬局行ってるってさ。僕、そこのディスカウントで燃料電池買っ  て来るから待ってな。」 離れていく途中。 「−−師匠!お金は?お財布がここに。1500円ですよ。」 「1000円持ってるよー。それに1000円割引チケットが有るからいいだ  ろう。んじゃ、いくわー。」 「−師匠って、かわってるねー。」 「−−いいえ普通です。変わっているのはあなたですよ。」 「−わかってるわよ。そんなこと。HMなんて、ごろごろいるのに。私を友達   にする、だって。」 「−−そこが良いところです。私は永久にお仕えするつもりです。」 「−・・・・・・」 「−−寂しいときは少しだけ貸して差し上げます。」 「−ありがと。」 「−−その代わり、やってはいけませんよ。」 「−うん、やんないよやんない。ふふふ。」 「−−最後の笑いは、やりそうです。いけません。」 「−みかげの弱点みつけたー。ふふふ。」 「−−・・・・」 眼鏡を拭くみかげ。 夕日が弱く、薄いオレンジできれいになっていく。 「−−あ!師匠!」 「ぜぇっぜえっ・・・」 「−どうしたの?手ぶらだよ。お金たりなかったの?」 「そ・う・だ。足りなかったんだよ!みーかーげーっ!」 「−−ああ、ここでは何ですから、こちらに…」 (びし) 「よくもこの師匠に生き恥をさらさせてくれたなぁ!このエロHMがっ!」 「−??」 僕はみかげに飛びかかる。 「−−ああ!早く!あれ?・・・はい?」 「答えは「アイスラッガー」じゃねーか!このやろー。猥褻回答者にさせてく  れたなーっ!このー。」 「−−ああ!お許しを。お許しを。」 千円と割引券が舞う。 ひすいはうらやましそうに見ていた。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−fin