何だか眠い。 「んーーーーー。」 「−−おはようございます、師匠。まだ、10時ですよ。必要があればお食事    の支度をいたしますが。」 「んん。うん。いいよ。いらない。」 布団の上で背伸びをする。 寝返り打ち、みかげを薄目をあけて見てみる。 「ん?」 「−−はい?」 少し正座を崩したような格好。 眼鏡を外してみかげが顔を上げる。 「その本…。どこから。」 「−−はい、あの棚の右奥です。」 「だいぶ読んだの。」 「−−はい。この本で最後です。」 目が覚めてきた。というより覚めさせられてきた。 エロ本だ。…エロ同人誌もある。 みかげの右側に分類されて積み上がっている。 「うー。それは…」 「−−大変面白うございます。特にこの漫画などは続きが無くて残念です。」 「あー、それね。作者がその続き描いてないんだ。っていうか他の連載始めち  ゃったからもう続きは無いかもな。」 「−−そうですか。残念です。他の作品も性描写の部分が、大変興味深く、感    激しました。私もかのように行いたく思います。これなどは、松葉崩し    の変形と推測します。」 「あーさからなに言ってんだ。このエロロボが。他の本読め!」 「−−ですが、この部屋の本はこれで最後です。他は読んでしまいました。」 「……。早いね。立派なマニアック娘に育ったな。」 「−−これで、やっと師匠の話にも付いていけると思います。」 「ふん!甘いな。僕は師匠だ。きみの知らない世界はまだまだ多いぞ。」 「−−はい。期待しています!どんなことをされるかと思うと、何だかこの辺    が熱く感じます。胸が高鳴る様とはこんな感じなのでしょうか。」 「その辺は胸とは言わんと思う・・・」 「−−演算のしすぎでボディのどこか故障してしまったのかもしれません。早    く「あの」パーツが欲しゅうございます。」 「脳だな。きっと。」 「−−早く「はにゃーん」という状態になってみたいです。」 「変な活用はせんでええ。」 ああ、稼働6日目にして僕は既に教育を誤ったのだろうか・・・。 −−−−−−−−−−−「大須芹緒組Final」−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 昼前に大須に出かけよう。 平日は、大して混んでいないのがうれしいところ。 「−−はい、空いていますね。あら?」 「そうか、今日は水曜日か!」 水曜日の大須は寂しい。店の多くが休業な為だ。 パチンコで駐車券を貰い、早速練り歩く。 「−−ここも閉まっています。」 「まぁ、こんなもんだな。あっち行こう。」 「HMパラダイス」の隣「TwoTop」前。 「そういえば、こんな店が出来てたんだなぁ。」 「−−初めて入りますね。」 「確かツートップって潰れたはずではなかったかいな。」 店内。すぐ出てくる。 「あかん、あかん。」 「−−そうですね。価格がやや高うございます。しかし、今日は閉店も多いの    で選択肢は少ないと感じますが。」 「うーむ、次!」 そのまま歩いてドル山の前。 「あれ?ドル山の「山本」が無い。」 「−−先日、渡辺様が申しておりましたよ。師匠は、眼鏡をお探しになってい    ました。確か、経営者が変更になってどこかに吸収されたとか。」 「ほへー。聞いていなかったよ。」 「−−お気づきでなかったのなら店内の変化はあまり無いようですね。」 更にキッチン東京。 「そこで・・・今度Airが出るってわけよ。」 「−−先ほどのポスターには発売延期と書かれていました。残念です。私も是    非プレイして号泣してみたいです。」 「号泣といっても、ゲームというジャンルを除けばもっと良いストーリーもあ  るけどな。エロゲやっている人たちにとっちゃー、このジャンルでの名作と  判断するんだろーな。僕も面白いと思った。」 「−−あ、別件ですが、昨夜就寝時に言われたことが整理出来ていません。師    匠も話途中で眠られてしまいましたし…」 「おー、そだった。すまんすまん。まずだ、…」 僕は大正カツを一口入れ、説明をし出す。これからのルールってな所だ。 ・週2000円の小遣いを渡す。 ・3ヶ月に1度1万円のボーナスを渡す。 ・週1回、平日1日を自分のための休暇とする。 ・連絡用に携帯を持たせる。 ・休息や充電は師匠に合わせて行う。 「んー、他には…。昨日言おうと思ったこと覚えてないや。」 「−−重ね重ね、私のためにありがとうございます。」 「さて、げっち、飯食ったか?行くぞ。」 まずはグッドウィルMAC店の横の電器屋。 「−−師匠何を見ているのですか?」 「モーターだよ。すいません、これ、それからこれ、あとこっちの…。」 店員がテキパキと品物を集める。 みかげはモーターを1つとり、驚いた表情をする。 「−−大変です。タミヤ製を購入しています!」 「そだよー。」 「−−ご存じならなおさら…Kモーターではありません。」 「何いってんだ。来栖川が唯一負けている部分ではないか。ライバル社でも  良い物は良い。げっちが発売された頃でも、そうだったろう?ミニ4駆世  界選手権でも上位3位はKモーターではなかったろ。」 「−−ですが、オフィシャルのモーターでないとテストが。」 「テスト、通ったろ。げっちは。」 「−−!!まさか私のパーツにもタミヤが?!」 「いや、丁度資金無くてマブチだ。ちょっと落ちるけどな。」 「−−マブチ!!」 「それも水中用だ。安かったんでな。」 「−−水中!!」 店を出る。東へ向かう。「OAプラザ」辺りでみかげが喋り出す。 「−−燃料電池の残量計算が合わない訳が分かりました。師匠も、師匠で、一    言ぐらい言ってくれても良かったのではと考えます。」 「マブチだよー。」 「−−今、言っても仕方ありません。…ああ、来栖川本社様、お許し下さい。    よりによって、最も競合しているパーツを付けてしまいました。」 「来栖川はホントにモーター関係だけはうるさいな。海外HMだってあるだろう  に。んな、タミヤ・マブチで目くじら立てんでも。」 「−−師匠のサードパーティー好きも筋金入りですね。ちなみに海外の9割はタ    ミヤのはずです。」 「ご名答。選択は間違っていない証明さ。」 さくら銀行を抜け、上前津の交差点にかかる。 古書「海星堂書店」 「−−?」 「海星堂だ。お前の古いマニュアルを探したい。」 「−−はい。」 「げっちは店内うろうろして、欲しい本でも探しゃー。家帰っても読むもんねー  でなー。2、3冊。」 「−−ありがとうございます。」 「じゃ解散。」 集合、みかげが来ない。またか? 1階のブースへ降りる。居た。 しゃがみ込んで下を向いている。時おりずれてくる眼鏡を直す。 「おい、どしたー?げっちー?」 みかげは振り向くと顔が真っ赤である。恥ずかしそうに口をへの字にしていた。 「??なんだ?ちびったのか?」 「−−いえ。これが…。」 更に顔が赤くなる。異常な処理だ。静かで有名なセリオタイプだが、隣まで空 冷の音が聞こえてくる。 「(か、かわいいじゃないか。)…ん?なんだこれ。」 [スーパーロボッチ、大解剖133] 「−−殿方の裸を見るのは初めてで、処理が付いていけません。」 「わ、わ、ヒートすんなよ。表行け!すいませーーーーん。これくださーい。」 「−−師匠!申し訳有りませんがこれも…。」 「わかったわかった。はよ行きゃーせ。あ、これもお願いします。」 [小説暴れん坊将軍天下無頼九州編] エロ本買うより恥ずかしかった。 「。。。。。げっち。口元がゆるんでいるぞ。」 「−−はい。とてもうれしゅうございます。」 「そんなに抱き絞めると本折れるでー。」 「−−あ!・・・はい。」 「マブチだしな。パワーだけあるぞ。」 一度車に荷物を置いて工具箱を2人で持つ。 ディスカウントショップで燃料電池を買う。 その足で、ホームレス集合所へ。 「いよ!」 「−−いよとは、こんにちわの事です。」 僕らは彼女を、つまり、100m道路中州に住む野良HMのメンテナンスにやっ てきた。彼女は最初困惑していたが、承諾してくれた。 「げっち、そっちあけて。」 「−−はい。」 「あー。CCD腐ってる。よく働くなぁ。動いてたなぁ。」 「−−ほとんど片目状態だったのですね。」 「ま、げっちよりも新しいタイプだから、支障が出てないのかもな。」 「−−足りない部品は私のをお使い下さい。」 「(結局僕が出すんだが…)ん、まー優しいこと。そんな童話を聞いたことあ   るなぁ。・・・じゃ、脱げ。」 「−−脱ぐには前戯が必要です。あっ!」 (ぴし) 「何いってんだこの口か?(むにゅー)」 「−−ひひえ、ひたのふちでふ。あっ」 (ぴし) 彼女の部品をいくつか替え、燃料電池を補充してやる。普段は公園から電源を 取ってるみたいだ。気を付けてと忠告しておく。 夕方。みかげを床屋に行かせる。ちょっと切って貰う。その帰り。 「−−今日はたくさん動きました。」 「精神的に疲れたよ。」 「−−本は読み終えたらお貸しいたします。」 「たぶん、一生よまんな。その本」 みかげは少し走って振り向く。丁度本の紙袋を後ろで持ち、踊っているような 感じだ。夕日がシルエットを映えらせる。 僕は少しぼーっと見てしまった。 そういえば、セリオタイプのほとんどは現在も稼働中だという。 嘘だと思っていた…。 影がちらちらと僕にふれる。 「−−ふふ。」 「?」 「−−師匠、私はやっぱり幸せ者です。」 「ロボットエロ本買ってか?」 「−−(ぷー)いえ。(つん)(…)(にこっ)」 「−−お金貯めたら、局部パーツを買います!そのときは、連れて行ってくだ    さい。」 「へぃへぃ。忘れろって。」            −−「大須芹緒組」−− −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−fin 「−−師匠の好きなびらびらタイプにします!」 「いつ言った!」