「−−私に服を選べということですか?」 「さっき言ったこと、他にどういう取り方ができるん?」 「−−選べとおっしゃるなら選びますが…。」 ケープタウン。中古の洋服屋だった。 やや道にはみ出した、衣装ハンガーの山をうろうろする2人。 「−−同じような服がいくつも並んでいます。」 「選択による特典をつけるためだろう。店のカラーもあるしなー。」 「−−はい、迷ってしまいます。」 「みかげっちでも迷うことはあるのか。好みの色とかはないのか?」 「−−選択理由を計算すると、どちらを購入しても条件に一致する場合の品物    の選択が不可能です。こういう場合は、師匠に見て頂いて、どちらかを    決めるのが、よろしいかと思います。」 「−−好きな色は、作業上や環境上で支障の少ない色を指すと思います。たと    えば…これなどいかがでしょうか。この服なら作業も行いやすいですし、    色的にも目立ちますから、混雑時の私の存在確認も容易かと思います。」 眼鏡をやや下にずり落とし、胸にTシャツを合わせてみる。シャツで隠れるは ずなのになぜか、今着ているカッターシャツの柄がわかる。 「シースルー蛍光ピンク腹だしTシャツ…」 「−−試着してみましょうか?」 「や、やめといた方が、良いかと…」 「−−試着が可能なら試着を行い、十分な結果を伴っているか、第3者の目で    確認をする必要が有るかと判断します。」 「2つの自爆ボタンが見えてしまうような…」 「−−やはり…私の好みでは何か問題が…」 「うむ、問題か。青少年育成に多大な損害を与えてしまうな。」 「−−?青少年以外の方には問題が無いという意味でしょうか?」 既に僕のハートにクリティカルだった。 −−−−−−−−−−−−「大須芹緒組7」−−−−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 服を何着か買い込んだ。 よくよく考えたら、ブラジャーも買うので、シースルーでも問題はそんなに無 い気がしたが、部屋でしか着ないよう注意をしておいた。 みかげは大事そうに紙袋を抱えて出てきた。出るや、お辞儀をし、 「−−私のためにありがとうございます。」 「さ、他見に行こう。」 まずは大通りそばのキッチン東京へ。入り口。 「−−大変です。ランチが終わっています。」 「そか。2時過ぎならしょうがない。ランチ以外高いから、ほかいくかー。あ  とでたこ焼きを食いに行こう。」 「−−私も充電ができなくて残念です。」 ケープタウンから東に戻って、赤門交差点の通りへ。少しずれた位置にショッ プが何件かある。「ツクモ電気」、2階には「DotCraft」 ツクモの中はやや混み合っている。緑の服に黒いエプロンの店員が2人ほど客 に説明している。客のおっさんは何か迷っているようだ。 「−−ここはー」 「ここは、主にメインボード、表情関係のヒューマンボードを売っているよ。」 「−−はい。たくさんあります。」 「選択肢は主処理の回路にあわせて数種類しかないから、そんなに無いよ。」 「−−私のボードも有るのでしょうか?」 「有るよ。あそこ。KRSGW13−セリオ専用」 「−−わかりやすい型番ですね。¥18000ですか。勉強になります。」 「ちょっと前の名機ならこれかな。BH6、ver1.1だっけ。今は、安く  て買いかなぁ。」 「−−¥6000ですか。ずいぶん安いです。」 「値段よりも安定性とかさ、こいつは、ジャンパーやディップを使用せず、立  ち上げ時の音声で機体の設定が変えれるんだ。」 「−−こちらのは水が走っています。すごいボードです。」 「ボードよりも水冷装置を見せているんだよ。セリオのにも乗るけど空冷で十  分だ。」 ヒューマンボードコーナーも見る。 「ぼかね、みかげっちに将来これを取り付けたいんだ。」 「−−カノープス。ヒューマンスペクトラDDR2ですか。」 「表情なら、これ。もう繊細さと綺麗さではこれこれこれ。」 「−−¥59000もします。大変高うございます。」 「天使の微笑みが欲しければ買うさ。それにメインの処理自体もヒューマンボー  ドに足を引っ張られていることが多いんだ。」 「−−そうですか。複雑で、理解に苦しみます。」 2階を見てみる。 店員さんと客が話ししている。 「…ね、ね、何で633M置かなかったの?」 「あ、あれね、お客さん、僕は失敗作だと思うんですよ。だって、順当なら計  算で666.6M、つまり667MCPUが妥当でしょ?だから、633M  は入荷しないことにしたんですよ。」 「−−ここは先ほどの店よりずっとシンプルですね。」 「さっきと店のタイプが違うよ。注文型だ。よく出るものはおいて置くが、あ  とは店員と客の付き合いや話し合いで購入品を決め仕入れるのさ。」 「−−ユーザの情報を多く含み対応し、サービスする、ということですか?」 「そうだね。」 「−−立派です。大変感動しました。」 「下の店も立派だよ。大量のニーズに合わせて用意し、量販する事で価格を低  くしてるんだ。」 「−−いえ、どちらかといえば、HMはこの店の様にありたいと考えます。」 「店としては経営が難しいね。経営が困難ならサービスも減ってしまうよ。」 「−−はい、私もギャロップデータが少なくて、困惑しております。」 「また、今度本屋さん行こう。」 だいぶ歩いてたこ焼き屋。主にソフトを扱っている「ダイナ」の隣だ。 「あ、つぶれてる。」 「−−あちらにも、たこ焼き屋はありましたが…ほら、変な生物の看板が立て    かけてあった店です。」 「うう、ここのおばちゃんの巨大たこ焼きが良いのだよ。何でつぶれたかなぁ。」 「−−そうですね。残念です。」 そして、パーツショップ「HM工房」の前。 「−−見たところ来栖川商品が一品もありませんが…。」 「もう慣れたろ。サードパーティーが熱いんよ!」 「−−確かに。まだ何か買うおつもりですか?」 「んー。特にはー。」 と、店内を見るとポータブルCDプレイヤーが置いてある。 「携帯用!」と書かれた張り紙がある。横にはミムジィタイプのHMが立って いる。店員さんが寄り、すぐさま説明を始め出す。 「お、新製品ですよ!どですかー。そちらの方に。」 と言ってみかげを手のひらで指す。 「なにぃこれー?」 「これはですね、雑誌などのテラCDを端末なしに機体のまま読めちゃうんで  す。向こうの国では何機種か出てはやりだしていますよ。」 店員はCDを手に取り、ミムジィタイプの耳のアンテナに挟み込む。 テラCDはむき出しで回転を始め、髪が当たらないようにゆっくりと角度を外 側に降ろしてくる。 「おお!超電磁ノコギリみたいだ!」 「でしょー?」 回転が高速になり、ミムジィタイプは生気を取り戻したかのように動き出す。 手振りをつけ、歌い出す。 「椎名林檎だ。」 「はいー。HM用MUSICトレーサーです。」 「声は喉からだが…。?」 「ラインインで腰のスピーカーから伴奏を出しています。」 「おお!すげー。」 「他にも背中のタイプもありますよ。ほら、演奏やめて。」 ミムジィタイプが静かになり、くるりと背を向ける。背中肩胛骨の中間あた りにCDプレイヤーが。 「バーチャロンみたいだ。」 「はいー。ちょっと皮膚切らないといけませんが、こちらでやりますよ。こ  っちは防水と、CDが傷つきにくいです。スロットインもありましたが、  防水で無いので、入荷していません。」 「うー。」 「また、買う気になったら声をかけて下さい。」 よろよろと店を出る僕。 みかげがあわてて出てきて服を引っ張る 「−−全く予測付かない商品でしたね。…師匠まさか…欲しいのですね。」 「うん、耳のやつはかっちょえー。」 「−−¥29800ですよ。3万円も使ってしまったら、大変です。」 「ゆくゆくライターも出そうだが、あれはいい!こう、ビビッときたね。」 「−−そんなに使えるでしょうか?」 「げーむCDなんか、みかげっち連れて行くだけで、吸い出して、家でゆっ  くり焼けるんだが。」 「−−師匠、それは、不正コピーです。犯罪の幇助はあまり行いたくあり    ません。感心できません。」 「まぁまぁ。冗談だよ。でも、本屋で読み逃げもできそうだな。」 「−−…私も一緒に逃げなくてはなりません。」 「まあな。データ泥棒あらわる!ってとこか。」 「−−捕まったら私は解体です。そしたらデータを調査して、師匠も捕まり    ます。自爆装置が必要です。」 「2つ付いとりゃーすが。」 「−−?」 僕らは店を出て、もう1件向かう。大通りに向かい、「ゲートウェイ」へ。 海外ブランドだ。乳の大きいHMを作っている。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−fin