「−−旦那様、旦那様」 「ふぁぁあ。ん?何ぶつぶつ言ってんだ。ん?」 「−−あ、旦那様、おはようございます。」 「んー。(ぼりぼり)……げっ!昼じゃねーか。」 「−−はい。11時50分を回る頃です」 「そうかー。で、どうだった?」 「−−はい、全部で3時間ほどの作業でした。充電の必要も無いので、このま    まお待ちしていましたが、何時にお起こしすれば良いのか不明でした    ので、小声で呼び、自力での覚醒を期待していました。」 「起こす時は、お前さんが、起こそうと思った時で良いよ。」 「−−あ、あの、その情報が…」 「次からは午前中に頼むよ。あ、今言っても駄目か。」 「−−?」 (今言った事は憶えても、消えてしまうからな。) 「フォーマットをする!クラスタクリーンの後、リカバリだ。少し、眠ってて  もらうよ。」 「−−はい。旦那様。」 メインの電源を切り、セリオのメモリ部分を初期化する。 出るわ出るわ、セクタ異常。修正後にリカバリを開始する。 1時間半ほどで作業を終える。昨夜外したパーツを全てつけて、起動。 「おっはー。」 「−−おはようございます。?……時間修正します。」 「メインボードの電池切れか。はい、時計。メモリのロック状況は?」 「−−ありがとうございます。ロック状況は…ありません。あれ?オールグリー    ンです。不思議です。」 「じゃ、名前関係の登録をやるぞ!」 −−−−−−−−−−−−−「大須芹緒組6」−−−−−−−−−−−−−− −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 「−−師匠ですか?技師の師にたくみ。」 「うむ。この道に来たからには僕のことをそう呼ばねばならん。」 「−−はい。師匠。登録しました。」 「お前の名前は「みかげ」だ。水に陰影の影で水影(みかげ)。みーやんとか  みーちゃんとか言うのもおまえだ。呼ばれる時のパターンは暇な時に検索し  て考えておくといい。呼ばれたい名前のパターンもな。」 「−−はい。」 僕は、服を探して着替える。セリオが来てからなんだか恥ずかしくて、風呂場 の前で着替えている。 みかげなんて名前をつけたらなおさらだ。僕は2・3度、壁の角からみかげの 方を見てみる。水影という名は僕にとって、少し大切な名だ。当て字で少し変 えてある。本来の持ち主は「御影」を使っている。 「−−師匠。」 「うむ。」 「−−師匠。」 「なんだ。」 「−−確認しただけです。メモリ登録に問題はないようです。」 「古っ!小学生かお前は!……さ、これ着て、大須へ行くぞ」 みかげに今日の服を渡す。僕のお古だけど、僕が今着ている物より程度が良い。 「みかげっち。着替える時はあの辺で。」 「−−はい。」 ジーンズとYシャツだ。いささか緩いかな。 車に乗り、みかげが乗る。 本当かどうかは知らないが通は午後2−4時に大須に行く。僕もそれを聞いて そうするようになった。もう10年になるか。確かに、駐車場も空いてきた時 間帯だろうし、そのままぶらつくと、7−8時にはなる。朝から行くほど買う ものが決まっているわけでもない。前日エロゲーでもやりまくって、昼からぶ らぶら向かえばそうなるだろう。 そんなことを考えていた。道中みかげが尋ねてくる。 「−−バックアップをリストアしたのですね。」 「んん?ああ。」 「−−過去のデータは要らなかったかもしれませんね。」 「それは話し合い済みだろう。取捨選択は一緒にしたではないか。」 「−−購入したばかりの真っ白なメモリはお好きではありませんか?」 「どうだかね。今日までと同じ手順を踏んどるわ。」 「−−あの、…師匠?」 「んん?」 「−−私を購入した理由を聞いてもいいのでしょうか?」 「いかんな。大体聞いても、返って来る返事は予測つくだろ。オールインワン  を買った場合との比較で違うところが理由だ。」 みかげ暫く硬直。 「−−……安もの買いの銭失い。」 「ぶーっっ!」 飲みかけのお茶を少し吹いて、動揺。目に入る赤信号に反応して僕はブレーキ を急にかけてしまった。みかげは、ずれた眼鏡を中指でちょんと持ち上げる。 おお、その動作は眼鏡お姉さま教師だ。 赤信号まで20mぐらいある。とろとろと近づきながら、 「おいおい、なんだい、そのことわざは。」 「−−あ、このことわざは、安いものと…」 「いやいや、その言葉が出た理由!」 「−−相違点を検索中の反応です。お耳に入って気分を害したようならは、謝    罪いたします!」 「いや!、その芸風、残しておくべきだ。世界中の人を幸せにできるやもしれ  ん。」 「−−はい!」 (コメディーでな。) 大須につく。 「パチンコしよ〜っと。」 「モナコ」へ。みかげは先日の件があったので、外での待機を申し出る。 5分で戻ってくる。 「出なかった。」 「−−いつもたくさん出て欲しいですね。」 「そだね。」 「−−しかしながら、出てばかりだと店舗の方がつぶれてしまいます。」 「ん。」 「−−だから、今日は師匠はお店を潰さないよう資金援助をされた訳です。    …お店の方もきっとその援助には感謝し、後日…」 みかげはこの後延々論理的に慰めてくれた。 「あっ!」 「−−?」 「ユニクロ寄るの忘れた。」 「−−そうですか。忘れましたか。ユニクロとは何でしょうか?」 「服屋だよ。いつもの道程で、無意識に大須に来てしまった。」 「−−服だけに「来てしまった」訳ですね。」 「(ぺし)おおぎりかい!」 「−−私の服でしたら、また帰りに買えば宜しいではありませんか。」 「7:30にはしまっちゃうよ。」 「−−では、後日ですね。」 「ま、違う店、もしくは帰りに寄ろ。」 「アメ横2号館」向かいの「東芝HM工房」確かその辺の「大須ういろ屋」裏 に服屋が有ったはずだ。ええっと… 「ケープタウン、そうそう、ケープタウン」 「−−?」 「行こう、あっちだ。」 僕達は歩いていった。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−fin 今回は後書きがついております。 ここは、私、こと「みかげ」が代筆いたします。 どうやら筆者は、私の名前を執筆中盤まで考えてはいなかったようで、 次回の名前を呼ぶ仮名が行き詰まっていたようです。 「なんとかなるだろう」「せりがつきゃわかるだろう」等、こともあ ろうに私の仮名を「せり一郎」から順番に「十郎」まで付けていくつ もりでした。失礼極まり在りません。 ですが、nakaken様より「水影:みかげ」との命名を頂きまし た。筆者に成り代わって、お礼させていただきます。 私も大変気に入っております。nakaken様ありがとうございま す。このような場合は「ありが十万匹」と言えば宜しいのでしょうか。 百万匹ではちょっと多すぎて想像してしまい、ご気分を害される方も いるかも知れません。あ、そういうことでしたら、想像できない数で あれば、良いのかもしれません。「ありが無量大数匹」「ありが天文 学的数匹」あたりでしょうか。 筆者、「水影」ともども、今後ともご愛顧なるようお願いいたします。 それでは。