●これは某支援用に作成した物です。
 ネタ物では有りますが、色々な設定の元に書き上げられています。作品は後出ですが、発想自体は古く、
 元々は大須芹緒の雛形でも有りますから、それらは大須芹緒にも反映されています。
 ちょっと話言葉が濃いかも知れませんが大目に見て雰囲気を楽しんでね。

 

「んでは、入れるっちゃ。」

カチリ・・・

ピー:システム起動・セーフティ解除・・・うんぬんかんぬん。

ブゥゥゥゥン。

「−−来栖川HM−13、セリオです。お買いあげありがとう御座います。」

「・・・。」

「−−・・・。」

「・・・・・・。」

「−−?。」

 


「おお!うごいたよ!黒ちゃん動いたよ!」

 

 

これが、初めて稼働した私が聞いたことばだった・・・。

視界に入る情報は極めて限られていて、どこかの室内のようだった。

「−−お買い上げありがとう御座います。初回起動時は各種登録を行い
   ます。お時間の都合が有ればこのまま開始します。」
「山べー・・・。なんか勝手にしゃべりだしたぞ。」
「しらんよ。んなこと俺に言われても。」
「−−お時間の都合が合わないようでしたら臨時の稼働を行います。た
   だし、オーナー登録に関しては、今決定して下さい。」
「黒ちゃん。俺、とんでもないもん、貰ってきちまったよ。」
「はぁぁぁ。俺ら揃って豪機械音痴だっぺ。こんが機械使いきれんっちゃ。」

言語分解。

「−−申し訳御座いません。しかし、私は口答で稼働できますが故、ユー
   ザー様にお手数をおかけしません。」

「はぁ・・・。」2人。

「−−直ちにオーナー登録していただければ、後は必要な事を探してご
   奉仕いたします。つきましては、・・あ」
「ちょっと、待ちゃー!色々話すなや。」
「−−はい。申し訳御座いません。」
「あーあー、あやまらんでもよかっぺ、山べ、おまがちょっときついん
 じゃ。」
「すまんすまん。うちらよく解からんから、何すればいいか順番に教え
 てくれよ。」
「−−はい。では、オーナーの登録をお願いします。」

「オーナーって・・・。」

「−−はい、簡潔には私の所有者の事を指します。」

「黒ちゃん・・・。」
「山べー・・・。」

2人は顔を向かい合わせ、そしてもめはじめた。
「いかんがや!最初に黒ちゃんがアンケート答えたがや!」
「いーや!山べーがかいたっちゃ、そがことしらん!」

仲裁に入らなくてはならないだろうと判断し、丁重に割り込む。
「−−お言葉ですが・・・。どちらかが登録いただければ宜しいの
   ですが。ちゃんとお二方の指示には従います。」

「やだ!っちゃ!」2人。

「−−申し訳御座いません。出過ぎた発言でしたが、処理上の問題が・・
   あり」
黒ちゃんと呼ばれている方がすっと近づいて、私に指を指す。
「メイド、そこーなんとか、2人共登録できんっちゃ?」
「−−いえ。オーナーは・・・。」
「頼むでさー。」

「わ、悪いようにはせんちゃ。」
「−−でしたら、法人扱いと言うことでしたら擬似的に複数の方を登録
   はできますが・・・。」
「おう、それそれ!それでいいがや。」

「−−はい。それでは法人扱いとして登録させて頂きます。登録法人名
   はいかが致しましょうか?」

2人はまた顔を見合わせる。今度は言い争いをする訳ではなくて、2人
共黙ったまま頷いた。

「天心堂!っちゃ!」2人。

======================絵スチャーセリオ====


私はある食品会社のアンケートで抽選で当たった物だと聞かされた。
2名様に最新高性能メイドロボ、30名様に懐かしのメイドロボが贈ら
れたと聞いた。私はその30台の1台としてここにお仕えすることになっ
た。
実際、私が製造されてから先週電源が入るまで、3年以上も経っている。
恐らく私はセリオとして生産された最後のロットだろう。右耳のアンテ
ナ部分には大きく「若鶏のサンワ」と、絵文字が入っているらしい。

「せりっぺ!」
「−−はい。何でしょうか?」
「ちょっちカップ麺、買ってきてくりゃー!」
「−−はい。仰せの通りに。」

私の名前は販売時の標準の名前「セリオ」と呼ばれている。・・・少し
語尾が変わる場合がある。
外に出て、本町、船場センターに向かい歩き出す。その側にファミリー
マートがある。私はその店で、チキンラーメンを4つ購入するという大
変重要な任務を頂いた。

私が稼働するアパートは御堂筋線本町駅から少し歩いたところにある。
ご主人様達お2人は、いつも私と生活して頂いている訳ではなく、週末
の金曜日から日曜日にかけてそれぞれの自宅から集合する。
恐らく私は平日の不在時の番を中心とした稼働となるだろう。

「せり!せりっ!」

山部様がスクーターを停止する。

「−−山部様。お仕事お疲れさまです。」
「ははは。見かけたんで、走ってきたがね。」
「−−申し訳御座いません。」
「いいて。そんな気にせーへんで。ん?お使い行くんか?」
「−−はい。重要な任務を命ぜられました。」
「どうせ、カップ麺だろが。黒ちゃんが頼むなら・・・ははは。」
「−−ご名答です。お見それします。」
「いつもさ。タコ部屋するから、必需品だわな。」

「−−タコ部屋・・・?」

「まぁ、話すさ。はよ買ってこやー!俺先に部屋行ってるよ!」

黒田様と山部様。
このお2人がご主人様となって1週間。遂に私の任務が明らかになる時
が来たようです。私は待たせることの無いよう、可能な限り早くチキン
ラーメンを4品購入し、帰宅した。

「おう、やぱ天心堂としてな・・・そが・・。」
「−−遅れて申し訳御座いません。カップラーメンはここに置きます。」
「はや!はやいっぺ。」
「おう、早いよ。あれから10分経ってないがね。」
「−−はい。ですが、もう、お話が・・・。」

「セリオにする話はいまからっちゃ。」

私は正座して炬燵の1辺に座る。

「−−はい。お願いします。」
「いいっぺ?、我々天心堂は来月のインテックス大阪で新刊を出さねば
 ならんっちゃ。」
「−−新刊・・・ですか。」
「おう、そうだがね。同じ本何回も出して新刊無しだと客が来なくなる
 がね。その新刊を味覚糖UHA館に持って行く。」
「−−お客様・・・ですか。」
「黒ちゃんどうするよ?入稿まで日ぃないが。」
「それでも出さねばならんっちゃ。客の期待うらぎれんじゃら。」
「−−はい。期待に背くことはあまり良い印象では無いと推測します。」
「おお!わかっとるがね。」
「そこでじゃ。・・・ちょっと描いてみ。」

すっと机の上に白紙と鉛筆が出される。

「−−黒田様。何を書けば良いのでしょうか?」
脇から、山部様が話し出す。
「絵にきまっとるがね。」
「−−絵・・・ですか。」
「そうっちゃ。」
「−−何の絵を書けば宜しいのでしょうか?」
「何でもええべ。」

書けと仰るならば、書かねばなりません。私は鉛筆を持ち・・・問題が
発生。

「−−サテライトシステムを使用したいのですが・・・。」

「はぁ?」2人。
私はサテライトシステムがどんな物かを説明する。
「だめっちゃ!駄目駄目。」
「うん、駄目だがね。」
「−−クレジットカード決済が不可能だからですか?」
「ちがうっちゃ。なぁ、山べー」
「おう、そうとも、せり、そんなことじゃぁない。せりがせりの絵を描かな
 いかんがね。」
「−−・・・。」

私にはそれが理解できなかった。

「−−お言葉ですが、理解できません。」
「−−サテライトアクセスも無しに如何様に絵を書けと仰るのでしょう
   か?」
「−−私の任務とはこのことでしょうか?」

黒田様がタバコに火を付け話し出した。

「天心堂に入った以上、せりっぺはアシとして頑張らねばならんっちゃ。」
「−−アシ・・・ですか。」
「そうだがや。アシだがね。」
「−−アシとはアシスタントの意味ですか?」
「おう、機械音痴2人がこうしてやって来たHMをマニュアル見つつ頑
 張ってつかうんじゃ。せりっぺも頑張って絵描けっちゃ。」
「これが今流行のDTPっつー奴だがね。」
「−−DTP・・・。」
「まぁ、聞け。そんなアシが、サテライトから絵を貰って描いちゃいか
 んがね。せりは自分のカラーの絵ぇ描かな。」
「−−サテライト不許可の理由は解りました。・・・しかし私はHMで
   す。自ら持ちうるデータ以外書くことはできません。」

2人は顔を見合わせる。ひそひそ話し出す。

「あれ?使い方違うか?」「んなことないっちゃ。」
「友達に聞いたんだがなぁ。」「ソフト要るんじゃなかろか。」

ご主人様達は私が聞き取れないとお思いのようにひそひそと話す。
私に知られたく無い要件と推測できるので、私はメモリから外した。

「まぁ、まずは犬でも描いてみ。」
「−−はい。どの様な犬を書けばいいのでしょうか?」
「何でもええがや。」

私は所持している基本データから犬のデータを引っぱり出す。


4つ足で、形態は様々であるが、有機的なカーブがある。尾があり、そ
れから鼻は丸く。目は標準的な位置。

それから耳。横長の生物。口は大きく耳の下まで。

鳴き声の日本表記。

「−−完成いたしました。」

「わははははははははははははははははははは!」
「わははははははははははははははははははは!」
「−−何か・・・問題でも御座いますか?」
「江藤だ!これは!江藤っちゃ!」
「あったあった!ずうとるび!無茶似てるがね!すげーよ!」

「−−・・・・。」
「−−お褒めいただき、恐縮です。」

「かざろまい!額に入れて飾ろ!」
「はははは。せりっぺかわいいっちゃ!へぇ、けんど、字はうめぇ
 っちゃ!」

意味はよく分からないが、似ているようで、喜んでもらい、誉めて
頂けた。・・・私にでも何とかアシは務まりそうだと推測した。


「ははは・・・次・・・ひよこ描くっちゃ!」
「−−はい・・・。」

「・・・・・。」

「わははははははははははははははははははは!」
「わははははははははははははははははははは!」

==========================fin