「−ここでしょ。このバスだわ。」 「。。あうぅ。私はお金が・・・。」 「−払ってあげるわよ払ってあげるわよ!」 「。。貧乏で申し訳ありません。ありがとう御座います。」 「−とんちゃんが判らなかったら今頃迎えに行ってあげれないもんね。お礼を   言いたいのはあたしのほうだわ。」 「。。はい、確かに台湾に行くような話をしていました。」 「−まぁ、あたし達の気持ちとしては迎えに行くのは当たり前よね。」 パタパタパタ 「−・・・なによ。それ。」 「。。お帰りの旗です・・・あっ!」 「−いいもん、持ってるじゃないの。あでもね、これじゃぁ見えないから、目   立つように・・・。」 ビリ、ビリ、 「。。あっ!・・・そんな・・・。」 「−ほぅら、これで見えるわよ!」 「。。・・・しゅん。」 「−あはははー。うれしいならうれしいって言わないとあたしはわかんないよ!   HMにまで情動推測ルーチンまわす気ないわよ!」 「。。・・・はい・・・。お心遣い感謝します・・・。」 「−んもー、元気ないわねぇ!ほら、旗持って、リハるよリハ!」 「。。ぇ・・・。」 「−ほら、帰ってきた、お・か・え・りー!」 「。。ど・・・どこですか?・・・あっ!」 (ビシ) 「−だから!リハ!っつってるじゃないの!」 「。。はい。・・・リハです。」 「−じゃ、もう一回、はい、帰ってきた!」 「。。・・・おかえりぃ・・。」 「−くぁあぁ!テンションひくぅい!旗ふってなぁい!」 「。。ぅぅぅ。」パタパタ ブロロロロロロ・・・ 「−あ、バス行っちゃった。・・・トンちゃん!もう!行っちゃったじゃない!」 「。。ぅぅぅ・・・。」パタパタ ◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎  30000ヒット記念SS  台湾芹緒組!   幸せアルヨ! ◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎ クバスはホテルの前で話し出す。タクシーにお金を払いタクシーが走り去ると 静かになる。 台湾って不思議なとこなんだよな。 「%%他にも観光地をお見せしたいのですが。・・・このような時間です。」 「そうか。もう暗いしな。・・・十分楽しめたよ。お礼を言うよ。」 「−−はい。時間を忘れて、楽しい時を過ごすことができたと言っても過言で    はありません。」 「%%・・・・。」 「いろいろ。楽しかったよ。」 クバスは一度軽い会釈をして歩き出そうとする。ふと止まり、180度向きを 変える。 「%%ここでお別れは少し寂しゅうございます。」 「−−いいえ。お別れではありません。また、会いましょう。」 「ははは。その通りだ。僕でもわかるぞ、サイチェンだサイチェン。」 「%%ふふふ。そうですね。」 クバスはとぼとぼと歩き出す。歩みも遅く、後ろ姿もかなり寂しい。 僕はみかげをみた。 みかげはきょとんとして、いやきょとんとしたような顔のまま眼鏡をクイクイ 正しく直す。そうして、 「−−師匠。」 「ん?」 それから、僕の方を向き、 「−−師匠!」 「なーんだってば。」 「−−師匠、ここで引き留めない演算ルーチンでは将来の奥様が遠のく性格で    あると推測いたします。」 「ななななな・・・」 「−−ですからここを逃していつ誘うのでございますか?」 「あ、うん、うん、・・・そうだな。」 「−−ペニスですら刺す時期を逸しては半勃っきゃう!」 (びし) 「げっち、ありがと。」 「くばす!・・さん。」 クバスは100m先で振り向く。それから、ゆっくりと歩いてくる。 僕は鞄の日常会話本の一番奥のページをぱらぱらとめくる。みかげは眼鏡を外 して拭きながら僕の方など見ずに一言。 「−−お望みのページは91ページかとメモリに記憶しています。」 あった。 クバスは丁度僕らのそばに来る。 「%%あの、何でし・・・」 「ホンリャン、ニージンチャンワンシャンユーコンマ?いーきーくーへーちゃー  はおま。」 「%%・・・ふふふ。・・・是・・・謝謝。」 クバスは手を後ろに回し軽く笑った。 僕たちはホテルの2階にあるレストランに行った。1泊約5000元、約2万 円もするホテルだ。HMの充電ソケットも各テーブルに付いている。 僕はディナーセットを、みかげ達は席に着いて、僕の食事につき合いながら話 をしてくれる。 「でさ、そんときゃ、困ったよ。」 「%%まぁ、そういうことも有ったのですね。みかげ様は変わったお方ですね。    ・・・ふふふ。」 「そうやろ。うんうん。聞いたか?げっち。」 「−−お言葉では御座いますが、優先的な配慮の推測を行えばその行動は必然    且つ十分な行為と演算できます。変わっているご忠告の意味は、その課    程であり、それらが結果からの配慮で有るならば・・・あうっ」 (ぴし) 「また、結論先延ばしにするー。ははは。」 「−−失礼しました。言うなれば、ケツは当然の結果です。あっ!」 (ぴし) 「%%・・・ふふふ。・・・仲がよろしいですね。」 「−−え?」 「ははは。いっつもこんな感じだよ。」 「−−これが、仲がいいのですか?」 「%%そうですよ。みかげ様。うらやましゅう御座います。」 「−−私は、何とも演算していませんでした。こういう行為が好きな方と判断    していました。」 「それで、何度叩いても直らんのか。」 「−−師匠はただのスパンキングマニアなお方だったかと推・・・ぁっ!」 (ビシ) 「%%ふふふ。愛の形ですよ。みかげ様。」 「−−愛・・・。恐れ多う御座います。そんな・・・私如きが寵愛していただ    けるHMでは御座いません。」 「%%みかげ様は特別です。私のような汎用ではなく、師匠様にとって本当に    大切な特別な方だと思います・・・。」 「−−あの・・・的確な応答が現在不能で御座います。・・・否定も肯定も言    葉として表現してよいものかどうかを、ただ今演算中です。」 「%%それを、照れていると簡略推測し、指摘します。それに、師匠様は許し    ていらっしゃると推測しますが。」 「−−そうなのですか?師匠?」 「んー?まぁ、そんなような、そうでないような・・・。」 「%%師匠様、そこで、曖昧な態度をとられては・・・。」 クバスの顔が少し変わったような気がした。 「%%師匠様、我々HMはオーナーの行動を記憶し、その情動的な部分を推測    し学習する部分が有ります。師匠様が常にその態度を取られているなら    ば、みかげ様は半永久的にこの接衛を繰り返すと演算します。だから、    みかげ様は・・・」 「ははは、まぁまぁ、そう熱くならないでクバスさん。」 「%%私は別に熱くは・・・」 「−−演算による返答速度のずれを検出します。くばすさん。」 「ははは。食事も済んだし部屋も見て行くかい?」 「%%あ、はい。ご迷惑でなければ。」 「−−まぁ、クバスさん、安易な返答だと解釈します。この場合、貞操の危機    演算を行った上での返答であるひ・・・きゃう!」 (びし) 「んなことしーへんわっ!」 ホテル14階。 窓からは台北の夜景。遠くについ昨日の夜市が見える。 みかげは買った物の整理を、そして明日の帰宅の準備をする。 俺はロッキングチェアーに座り窓を眺める。 クバスがワインを持って入ってくる。 「−−クバスさん、ありがとう御座います。」 「%%いいえ。最後の夜を、楽しんで頂ければ結構ですよ。ワイン・・・ここ    に置いておきます。」 「ん?ああ、ありがと。クバスさんも見やー。夜景が綺麗だよ。」 「%%はい・・・。・・・もう少ししたら、帰宅します。」 「ん?うん。」 みかげがワインを開ける音が後ろで聞こえる。クバスは椅子の横に来る。 「台湾って不思議なところだよ。」 「%%はい・・・?」 「静と動が混在しているというか・・・、ほらさっきの喧噪から少し動くと全  く音がしない。ホテルの前もさ、タクシーが去るとこんなにも静か何だって  思ったよ。」 「%%はい・・・。」 「夜景もこうして見えるけど、遠くで祭りの音が聞こえるようでさ、ここはそ  の祭りとは別世界のようだ。台湾って不思議なところだよ。」 「−−人口の密度が時間帯や場所により極度に差が有るのですね。」 暫く3人で夜景を見る。さすがにクバスの筐体ですら、この静けさの中では駆 動音が僕の耳に届く。 「%%大切な・・・。」 「ん?」 「%%大切なお時間をお取りして申し訳御座いません。もうそろそろおいとま    します。」 「ああ。」 「%%みかげ様もお元気で。」 「−−はい。クバスさんも故障の無いようお気をつけ下さい。」 一度会釈をして去ろうとする。 「あ、げっち、あれ、渡したりゃー。」 「−−はい。」 みかげの右手首が伸び、カシャッと横にPCMCIAスロットが飛び出す。そ こからみかげはメモリーカードを抜き出す。 クバスにカードを差し出す。 「−−クバスさん、ノイズ解析用の暗号表です。」 「%%・・・!!」 「メモカ、シンプレムならささるやろ?」 クバスは一歩後ろに下がる。それから首をゆっくり振るような感じで話だす。 「%%いえ、私は・・・。」 「%%大変ありがたいのですが私はNECのシンプレムです。残念ながらその    暗号表は存じておりますが、機種が違えば無用にな・・・。」 「ははは。渡す意味が分からないかい?」 「%%え・・・。」 みかげは一歩近づいてカードを差し出す。 「−−セリオはいつまでもセリオです。」 みかげはそう言い、眼鏡を少し外す。下げる。 「−−だから・・・外見では無いので御座います。」 少し上目使いで見るみかげ。 クバスはぎこちない動きで手を伸ばす。カードに触れる。 「%%私が・・・セリオと・・・どうして・・・。」 「−−カードを。」 カードを手にする。 カードを受け取るとその場でしゃがみ込むクバス。大事そうにカードを抱え、 両手で自分ごと抱え込む。 「%%ああっ!あ・・・りが・・とう。ありがとう、御座います!」 ワイングラスを置き、みかげと一緒にそばに寄る。みかげはそっと、肩に手を 落とす。 「確かにサテライトはもう使えないけどさ、げっちが持ってるよ。バージョン  1.2だけどね。クバスもその時ぐらいのセリオだろ。」 「%%はい。・・・ありがとう御座います。」 大事そうにカードをなでるクバス。 みかげは目を離し眼鏡をかけ直す。俺の方を見る。 「−−師匠。私も根拠がはっきりしません。どうしてクバスさんがセリオだと?」 僕は背伸びをする。 バフッとベットに寝ころぶ。ああ、台湾のベットってじめじめしてて、やっぱ り気持ちは良くない。 「んー。思い返すと山ほど根拠は出てくるよ。細かな言葉も。そうだなぁ。  ・・・決定的なのは充電後の機動かな?どの機種も駆動は各パーツ同時に動  き出すんだ。だけど、来栖川の一部の機種はCCDの稼働がワンテンポ遅い  んだよね。」 「−−はい。CCDルーチンがソフト上の最後のアドオンのためです。」 「そうそう、だから遅い。だから、起きるとき、こう、するのは3機種しか無  いんだ。」 僕はよく見るセリオの起動を真似する。動作を先に始め、目はゆっくり開ける。 「こう。」 「%%そうでしたか。」 「ははは。じゃ、元マルチか?って考えにくいよ。な。じゃぁセリオだ。」 「−−初期に来栖川ライブラリを利用していれば手に入るのですが、現在その    ルーチンは閉鎖的なサイト以外では置いてありません。おそらくこれが    必要なのだと、師匠から話を聞いたときに推測しました。」 「%%感謝します。」 俺は咳をして言い直す。 「ま、そのノイズがとれることが良いことかどうかは判らないよ。だから、ま  だ感謝するには早いと思うけどね。ははは。」 「%%そう、ですね。でも・・・。」 「−−でも?」 「%%きっと幸せです。」 ・ ・ ・ ホテルからクバスを送り部屋に戻るみかげ。僕はシャワーを丁度浴び終わり部 屋から出てきたところだ。 「−−ただ今見送ってきました。」 「お、高く付いたけど良いことだったかな?」 「−−いいえ。良いことだと推測します。高くは付きませんでしたよ。クバス    さんが32Gのコンパクトフラッシュを代わりに下さいました。」 「おう、そうか。申し訳無いなぁ。ま、もらっとこ。」 「−−はい。師匠。」 僕は頭を拭きながら、 「ん?げっち、なに?」 「−−何度もお礼を言っていました。」 「・・・そうか。」 「−−私には判りません。幸せが。奉仕先のオーナーはもうお亡くなりになっ    たのでしょう?」 「ははは。げっちはそう言う観念がルーチンで山ほど有るやろ。」 「−−ですが。どうして幸せなのでしょうか?」 「うーーん。」 せっかくの台湾だ。みかげにはよくよく働いてもらってる。いわばみかげのお 疲れ旅行みたいなものなんだが、僕は少し思慮に困っていた。 みかげがここに来た甲斐はやはり奉仕なんだろうか。んー。方法が有るんだけ ど、照れくさいなぁ。と思っていた。 メモリをプレイバックする幸せかぁ。ある意味ではそれではHM失格なのかも しれないなぁ。 「げっち、・・・追想って言って、想うだけで幸せだったり不幸だったりする  んよ。」 「−−何となく理解はできますが・・・。」 タオルを置く。 「理解は計算で全てでは無いと思うよ。演算だらけのHMだってそうだ。」 みかげの手を取る。 「−−あ、師匠、いかが・・・んっ。」 僕はみかげに唇を重ねた。 1秒。 ・・・2秒。 すごい勢いでみかげの両肩のファンが回りだした。 唇を離す。 「−−師・・・。」 「しゃべるのは野暮だがね。」 そうして台湾の夜は静かに過ぎていった。 ・ ・ ・ 「−あっきたきた!きたわよ!」 「。。またリハするんですかぁ?」 「−むっきー!本番よ!ほら、あそこ!」 「。。おかえりぃ!(パタパタ)」 「うわっ!なんで、おまえ達いるんだ!」 「−−お見送り感謝いたします。」 「−帰ってきて、だぁれもいないと寂しいでしょ!このHM心がわからんのー?!」 「わからんのぅ。」 「−きーーーっ!わざわざ2日も待ってやったと言うのに」 「−−そうなのですか?トンちゃんさん」 「。。はい。ロビーは寒く、充電も有料でした。」 「−どう、少しは健気さがわかったでしょ!」 「そうかぁ?健気かぁ?押し売りだぁ。」 「−はい、荷物持つよ。これもこれもこれも」 「。。あ、私も持ちます。」 「あー、なんだかHM3人も連れて金持ちかと思われちゃうよ。」 「−そうでしょう?気分いいでしょう?」 「−−あちらからガードマンが歩いてくるのはどうしてでしょう?」 「うわっ。トンちゃん狩られるぞ。いこ!いこ!」 「−ねー、みかげ、データ見せてよ。ログ有るでしょ。」 「−−まずは走りましょう。追々車中でご披露します。」 「−エロオーナー!」 「いうなっ!ほら、タクシー乗るぞ。」 「−おみあげは?」 「んなん買ってねーよ。」 「−ええーーーっ!」 「。。あ、この袋にソフトが入っています。」 「うああああぁぁ。見るな見るな。」 バーチャルビリヤード。 「−・・・・。」 「。。・・・・。」 「とまるな、とまるな!」 「。。恥ずかしく思います。」 「−・・・ここまでくれば世話無いね。」 ◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎Fin タクシーの中、LANケーブルで交信をする3人。 「。。なぜ私が・・・ホストを・・。」 「−あんたも見れるでしょ!贅沢言わないの。ほら、スペースもっと開けなさ   いよ。」 「どうだ?」 「−へー。はー。きれいだなぁー。」 「−−・・・。」 「−あれ?みかげ、どうしてこのデータはノイズ乗ってるの?」 「−−・・・。」 「。。解析・・・できないです。転送エラーでも無いけど。」 「−−・・・。」 「−何か、いいなさいよ!」 「−−ふふふ。」 「−−あなた方には見れません。幸せとはそう言う物なのです。」