台湾台北・・・夜市。 「うわーっ!」 「−−タクシーから降りると全く違う世界かと誤認してしまいます。」 「げっち、くるくるするな。」 「−−はイ。あまりの感動にメモリ書き込みに負荷がかかってイます。」 「噂に聞くけど凄いね。露店って言うか、お祭りだな。 「−−はい。凄いです。」 「おお、あそこに、日本のような店が有るよ」 「−−漢字の使用で、有る程度の意味が把握できますね。露店と店舗で2重、    両側4重の商店街です。」 「人もバイクもごっちゃだ。」 「−−歩行プログラムを修正しましょうか?」 「0721。いいよ。」 「−−了承。一時的に歩行のぷろぐラムを変更します。」 「げっち、こっちだ。うひゃー!向こうはもみくちゃだ。」 「−−はい。(ふらふらー)」 「しっかしあっついなー!」 「−−33度です。湿度が高いようナノで、日本人は厳しい環境ですね。」 「このにおい。げっちパンクせんか?」 「−−嗅覚フィルタが古くて演算デキません。」 「そっかー。嗅がなくて良かったな。」 「−−そうなのですか?少し残念ですが。」 「ケンタッキーがあるよ!」 「−−はい。あそコナラ味は一緒かも知れませんね。」 「いやー。飯食ったし、飲み物だけだよ。」 ・ ・ ・ 「おお、ついたついた。」 「−−!師匠・・・アレを。」 「ん?何々?【禁坐家庭用女(男)僕機器人】 「−−・・・何となく意味は分かります。」 「世知辛い世の中になったねぇ。日本だけで無いのか。」 「−−座って、電気を使い、何も注文しなければ当たり前でしょうね・・・。」 「落ち込むな落ち込むな。周り見てみ!HMらしき連中がすわっとるやろ。」 「−−(くるくる)本当です。」 「まぁ、露店で何か飲もう!」 「−−はい。申し訳御座いマせん・・・。」 「いこいこっ!けっ。誰がこんな店来るか。べー。」 「−−ケンタッキー社が悪いわけでは有りません。その発言は撤回して欲しゅ    う御座います。私たちが悪いのです。それに、師匠のお心を汚す必要は    御座いません。」 「おけおけ。悪かったな。でも、座り料とりゃ良いがな。」 「−−それモ客商売の方は営業上理不尽かと推測します。やはり気の毒なのは    営業側です。」 「そーかなー。ま、他いこ!」 「−−はい。せっかく来たのですから、露店でお茶を飲まれる方がよろしいか    ト提案いたします。」 「請坐!請坐!請吃!請吃!它可口!」 「きんざ?」 「−−くぃんざぉ?・・・?」 「にぽんOKOK!スワって!スワって!おいシイよ!」 「どうするよ?」 「−−特に問題は無いと推測しまス。」 「お茶ぐらい有るかなー。んっと、(がざがざ)」 「−−もう持ってきていますよ。冷たそうです。」 「ありゃりゃ。」 「謝謝!謝謝!庭用女僕機器人!我想賣電池和水!」 「ん?げっちバッテリと水かな?そう言ってると思うよ。」 「−−はい。頂いても良いでしょうか?」 「おけおけ!ぱーっといこ!ぱーっと!げっちも好きなもん頼め頼め!」 「−−すいません!それでは、キョクブを!我欲性愛局…ばうっ!」 (びし) ◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎  30000ヒット記念SS  台湾芹緒組!   熱い罰アルヨ! ◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎ 夜市の露店。匂いさえ気にしなければ楽しいところ。 僕はストローで冷えたジャスミン茶をちゅうちゅうと飲む。 「−−申し訳御座いません。」 「お茶はお茶だなー。これも匂いが違うけど。」 「−−次回は想定した造語ではなく、きちんとした下調べを持ちまして…云々。」 「ああ、そんな長い言葉で言い訳せんでも・・・。」 「−−…ですから、罰をお与え下さい。」 「んなことせんでも、学習しとるがね。罰は学習せん奴にすることだ。」 「−−罰の認識の違いです。掟を守るためにも罰は必要です。」 「なんだそれー。(ちゅうちゅう)」 「−−いえ、やはり罰をお与え下さい。これ以上失敗しては、他のセリオタイ    プに申し訳が立ちません。」 「(ちゅうちゅう)・・・。」 「−−吊し上げでも、市中引き回しでも、裸獄門でも・・・あうっ。」 (びし) 「いつの時代?!・・・そんなに言うなら罰を与えてやろう。」 みかげは椅子を横にすり寄せて答える。 「−−はい!今されますか?服は脱いだ方がよろしいでしょうか?」 「そんな必要は無いよ・・・ふふふふ。」 「−−ああ!どきドキしまス!何でしょう。何でしょう!」 眼鏡を直し、胸に手をあてて、上目遣いをする。 「台湾に居る間。【局部】発言は「禁止」だー!」 「−−!・・・・・な・・・・・。」 「何でしょうじゃねぇだろ。今言った意味は分かるやろ。」 「−−!・・・・・そ・・・・・。」 「そんなことぐらい簡単だろ。言わなきゃ良いんだから。」 「−−!・・・・・ふぇ・・・・。」 「何だそれ。ともかく、コメントタグみたいな事ゆーてないと、わかったね。」 「ふぇらちおは良いのですか?ふぇら…ちょっ!」 (ぴし) 「う゛ぁぎ…ねっ!」 (びし) 「まぁ、他の言葉は言うのを許してやろう。あんま言うとそれらも発言禁止に  するからな。とにかく0721、「局部」発言禁止だ。」 「−−うう。了承。発言禁止を設定しました。」 みかげに水が出される。 「サービスネ!さーびす!」 僕とみかげは辺りを見回す。 あちこちで、HMが主人達と一緒に飲み物を飲んでいる。 「−−あ、ありがとう御座います。」 みかげは持ってきた紙コップのストローを手にし、口に運ぼうとした。 「いかん、いかん、他のHMみんなやってるけど、げっちいかんよ。」 「−−やはり。駄目ですか。特殊な水の可能性モ考えられたのですが。」 「ただの水みたいだ。ほら、あそこ、水道から汲んでるよ。」 「−−はい。本当です。私の不注意です。」 「台湾のHMは違うんだなぁ。食事キット安いんかなー。」 セリオはオプションで、味覚センサーを装着することが出来る。 データさえ有れば、味覚センサーとのコンビで無敵の料理人にもなれる。 まぁ、今のHMは標準で付いているんだが、これが買うとなると高い。 味覚センサーを取り付ける以前に、口に入った物をよけておくパーツも必要な のだ。 みかげの場合、何も付いていない。多少の防護は有るのだが、食べたら即本体 内部でぶちまける事になってしまうから、口に何か入るときは結構気を遣う。 金のある時に買ってやれればいいのだが、どうも買う気がしないと言うか、必 要なさそうな気もするが、買っていない。 みかげもたまーに料理を失敗したときに欲しがって言うぐらいである。 みかげはそんな物が無くても料理は上手いのである。 僕の舌が味覚音痴かも知れないが・・・。 そんなわけで、みかげは飲食に弱い。近所のガキにアメ貰っても食えないのは 気の毒だ。食べないから、「食事するならHMOK」の店も入れない。 僕は、「今度買おう」と、こんな台湾まで来て決心した。 みかげも気を付けているが、この雰囲気に押されたのだろう。 お茶も終わり、また雑踏の中を歩く。 ふらふらとみかげ。 混雑はしているが、店を見ながら歩くので、楽しい。 「おっ!凄いぞげっち!」 「−−??ただのテラROMでは無いですか?」 「7in1だ。いやー、買おうかなー。」 「−−800元と書いテありますね。2777.6円、約3000円です。ちョッ    とROMだけでは高いと推測いたしますが。大須と違い、台湾ですよ。」 「いやいや、これはな、エミュレータだ。」 「−−はイ。エミュレータで、御座いますか。」 「ほれ、PC−9801mk2、X1、ほらほら、往年のHMが、このCD入  れると現行機で蘇るんだ。」 「−−凄いでス!諸先輩方にお会いできるのですね!買いまショー!」 「買わん、買わん。やめやめ。思い出した。」 「−−??」 僕はみかげの手を引き店の前を過ぎる。 「まぁ、諸先輩にお前は会えんぞ。お前でエミュレートするしかないしな。そ  れに容量を食うし、多分7つの中、まともに動くのは1、2機種程度だろう。  以前雑誌で読んだ。お前に異常が起こるのも怖い。コレクション的に買う価  値はあるが、持ってるだけで3000円は高いなー。」 「−−左様ですか。お心遣い、感謝いたシマす。」 そのまま手を引き夜市を歩く。 ざわざわ! 色々な音が聞こえるが、聞き慣れない音。 はっきりと聞き取ることが出来ない。 ざわざわ・・・ そうか。有る意味静かなんだ。 ざわざわ・・・ 僕は、みかげの手を取り歩く。こっちでは普通だ。見向く人もいない。見てしゃ べっているとしても聞こえない。僕は僕自身の体裁に対して、みかげとの壁が 有ったのかも知れない・・・。 遠い国でのデート。 僕は本気だけど・・・。 不意にみかげがぐいっと引っ張る。 「−−!!あああ、あうあうアウアウ!」 「ん?!何もそんな、僕のまねせんでもええがな。」 露店には、HMパーツがズラッと並べられている。 「おお?パーツだがね。」 「−−あの、ソノシしょー!きょっ!きょっ!キョ!」 「んあ?ああ。げっち、これはなにかねー?3000元もするよぅ。」 「−−ううー。シショーししょー。イヂワル出巣!」 「まぁ、これでも安いと言えば安いけどねー。んー。買おうかなー。」 「−−あうあう(こくこく)。」 「んー。でも、みかげは特に欲しいともいわんしなー。」 「−−うううー。キョ!きょ!きょ!ほし。ホシ!星!」 みかげはくるくると回り出す。 「ん?げっち、どうした?ちょっと、おかしいぞ!」 「−−あうあう。きょきょ。」 「おけおけ、0721、禁止解除だ!みかげ!」 「−−コード確認。禁止を解除します。あ、アリがとう、ござ・・・」 みかげのふらふらは止まらない。 僕は、だんだん血の気が引いてくるのが自分で解った。 「どうした?!げっち?」 「−−いえ!シンぱいなさラ・・・ずに・・・。」 「げっちー!」 「−−ナイブシステム、キョウセイテキニサスペンドイタシマス。」 がくん。 「−−システム1スタンバイ。システム2スタンバイ、ギャロップノカクニン    ハキドウジノ・・・。」 みかげが倒れる。 ドラマなどでは、受け止めてやれるのだが全く別の方角だ。地面に俯せで倒れ る。周りの人が、避けるように歩く。 辺りの雑音がが、急に耳障りになる。 「げっち!」 駆け寄り、仰向けにする。 眼鏡が落ちて割れている。それを雑踏が躊躇無く踏んでいる。 パキ!ぱきき! 同じようにその音が僕の心でも響く。 いくつもの後悔が頭の中を駆ける。僕の冷静な判断が起動しない。 みかげの喉当たりに耳をやるが、中の駆動音が聞こえない。 「うう・・・。」 すぐ側の焼きそばのような匂いと、じゅうじゅう焼く音。 「シェンエン、シェンエン」 と、かけ声を出している。店員の声。 「%%師匠様。・・・みかげ様?」 僕は、少し現実の世界に引き寄せられた。 「%%師匠様、落ち着いて。」 しゃがんでみかげを抱きかかえる僕。顔を上げる。 目の前に立っていたのは、シンプレム。 そう、クバスとか言うHMだった。 ◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎fin