「−−大変な混雑になってきました。師匠、お手持ちの荷物にご注意を。」 「ああ、大丈夫大丈夫。」 「−−あ、これは・・・。」 「おお、そうだ。げっちは、向こう側から入るんだよ。」 「−−こちらからですか。HMさん達がたくさん並んでいます。」 「上見てみ。げっちは、飛行機の席に座るわけだから、右側の列【HM搭乗着  席】に並べ。」 「−−はい。・・・あちらは、【HM搭乗格納】と、書いてありますが、あち    らの方々はどういう方々なのですか?」 「HMが席に座らずに、飛行機の格納庫で運んで貰う場合の連中だ。あっちの  方が、席に座る3分の1ぐらいの値段らしいよ。気にせんとき。」 「−−そうでしたか。私はこちらですね。何だかあちらの方々に申し訳ないよ    うな気がします。それに、私のような物が師匠と一緒の待遇で搭乗する    のが、恥ずかしゅう御座います。私も出来ればあちらに・・・」 「だから気にするな。それに安い分リスクもあって、振動が多くHMの故障も  起こりやすくなる。」 「−−ああ、あらかじめ知っていれば・・・私もあちらに行けば、師匠は余分    にお金を使うことなく…あうっ。」 (ぴし) 「ははは。気にする娘やね!あんたが抽選で当てたんだろが。券はタダだし、  乗り換えてもお金は返ってこんがね。」 「−−そうでした。申し訳御座いません。」 「うむ。判ればよろしい。」 「−−・・・あれだけの数のHMさんが。何体かはきっと「アレ」が付いてい    ないでしょう。」 「何言ってるんだか。」 「−−列が短くなるとどきどきします。」 「やましい事しとらんやろ。危険物はロッカーの中やで。」 「−−危険物はロッカー?!ああっ!もし、局部を外して搭乗なら、「局部は    有りません」と恥ずかしい発言をしなくては行けま…しゃう!」 (ぴし) 「また大きい声でいう!もう言っとるがね!」 「%%あの、その場合は、「局部は危険物かい!」とご注意するべきでは無い  でしょうか?」 やりとりを見ていた、後ろのHMに注意された。 (いや、うちでは危険物でね)という言葉を飲んだ。 ◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎  30000ヒット記念SS  台湾芹緒組!   飛行機アルヨ! ◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎ 空港、出国手続き。 こちらはTVとかでよく見る手続き。鞄はX線検査機の中を通り、僕は金属探 知ゲートを通る。 僕の方が早く終わり、HMゲートの方からみかげをのぞく。 こっちはHMごとX線検査機の中を通すのか。 HM達は検査機を出た後、並んでいるテーブルにいる検査官達の空いている所 に列を作る。電磁銃みたいな物が部屋に3、4機据えてあり、そばにはちょっ と風貌の違うガードマン服を着た人が立っている。あれが人間には殆ど無害の 銃か。でも、ちょっと怖いな。 すぐ手前、僕ののぞいている出口の側にはHM用の体重計があり、女性検査官 が次々と来るHMの体重を量っている。 みかげも検査を終え、近くの検査官テーブルの前に座る。 検査官は人間だ。やはりこういう職業は人間が行うのが一番なのかな? 何を話しているか興味があるなぁ。 ■■■■■■■ 「座りなさい。」 「−−はい。」 「コードを持ち、この端子を接続しなさい。パスポートを。」 「−−はい。こちらに。」 「名前は・・・MIKAGEで合っているね。」 「−−はい。」 「目的は観光者の支援で合っているね。」 「−−はい。」 「外国入出国におけるHMの協定と条約を知っているかね?」 「−−はい。1994年制定の物です。」 「ああ、セリオタイプだったね。焼き付けて有るな。1999年に新たに制定  された分が有るので、出発前にHMカウンターの方へ行って必要なデータを  貰いたまえ。」 「−−はい。」 「また、HMに関する最低限の国別情報もそこに用意してあるので、必要なデー  タを入手しておくように。」 「−−はい。判りました。」 「よし。各メモリマップを登録したよ。今年から、5Tを越すデータを持ち帰  ると精密検査を受けなくてはならないから注意をしなさい。」 「−−はい。」 「ま、初めての旅行は何かとデータが膨れるから気を付けてな。それでは良い  旅行と奉仕を。パスポートを返します。」 「−−はい。ありがとう御座いました。」 「では、体重計の方へ。」 「はい、載って。お名前はMIKAGEちゃんね。」 「−−はい。」 「はい。・・・はい。はいおっけ。セリオタイプは少し重いので、細かいとこ  ろで、迷惑をかけないようにね。」 「−−はい。」 「燃料電池は搭乗時のHMに渡してね。出国までに少しでも充電をしておくよ  うに。飛行機の電源は不安定だからね。搭乗HMはそのゲートから出てね。」 「−−はい。ありがとう御座います。」 「はい、次の人。」 ■■■■■■■ 「おお、来た来た。」 「−−師匠、お待たせしてすいません。」 「いいよいいよ。こちらも面白い物を見れたよ。」 横では、家族連れが待っている。 小さい子が半泣きで待っている。他に父親と兄だろう3人だ。 「おね゛ぇちゃぁぁん!」 「==はい。お待たせしました。いい子ですから、お泣きになるのはおやめ下    さい。」 「うえっ、うえぇええぇ。」 「==さぁ、楽しい旅行の始まりですよ。」 「うぇぇぇ。だっこして。」 「==まだやらなくてはならない事が有りますが、ひろこ様をお連れしても宜    しいでしょうか?」 「ああ、行って良いよ。わしらは、待合所でコーヒーでも飲んでるよ。」 「==ありがとう御座います。さぁ、だっこ致します。」 「ひっく。うん・・・。」 「−−・・・・・・。」 「・・・・・・・なに。」 「−−師匠はだっこして言わないのでしょうか?」 「あほ。いい年して言えるかっつーの。」 「−−だっこして言って欲しい所存です。」 「行くとこあるんやろ?はいはい、行くよ。」 「−−あ、師匠、せめてお荷物だけでも。」 「−−ここですね。オートカウンターです。」 「げっ、金とるんか。ケチくせーなぁ。」 「−−無ければ困るデータですので、致し方有りません。」 「はいはい、300円っと。」 「−−すいません。暫くお待ち下さい。」 みかげはそこに出ているLANケーブルを耳に繋ぐ。 3分ほどだろうか。 「げっち、げっち。」 みかげは僕の方を見る。 「僕、そこの店で燃料電池、1本かっとくわ。」 頷くみかげ。 店舗内、HM用小物が少し売っている。 HM達が3,4人うろうろしている。 「燃料電池っと。うわっ、2800円だ。たか!」 「##いらっしゃいませ。」 「これを。1本。それから、そこの、ポッキーちょうだい。」 「##はい。ありがとう御座います。」 「−−師匠、お待たせしました。」 「おお、今、買ったとこだ。早かったね。」 「−−はい、特に大きいデータでは有りませんでした。」 空港のロビー。 ここは、既に日本でもどこの国でも無いらしい。 日本なんだけどね。何だか不思議な空間。 2人して掲示板を見上げる。 「まだ、だいぶあるな。」 「−−そうですね。63分あります。」 「なんだか、朝はよ来て損した感じ。」 「−−余裕のある行動は重要と推測します。」 「ほんとか?ははは、その分家で急いで、燃料忘れるし。」 「−−・・・反省します。」 「さ、充電しよう。」 僕は各イスに取り付けてあるコンセントから、日本を選んでプラグを差す。 充電器とつなぎ、みかげに繋ぐ。 「よっこいしょ。」 「−−師匠。お許し下さい。」 「んんん?」 「−−私は、大変困っています。」 「なんだなんだ。」 「−−師匠!私はフライト中は、師匠のHMで有りながら、空港会社にもお仕    えしなくてはならないようです!」 「ああ、そうか。」 「−−どうやら、ダウンロードしたデータの中の規定にはフライト中、緊急時    を含め、奉仕が容易な時は、奉仕を行わなくてはなりません。緊急時に    ついては、人命を優先し、私達は出来る限りの奉仕を平等に行なわなく    てはなりません。」 「ま、HMの勤めだな。いいんやろ?げっち、奉仕自体は好きやし。」 「−−・・・はい・・・ですが」 「どうした?」 「−−「舐めろ」と言われたら舐めなくてはいけませんし、「くわえろ」と言    われたらくわえなくてはい・・・きゃう!」 (ぺし) 「それが緊急時かい!」 「%%あの、やはりそこでは「それ以外に奉仕はないんかい!」と、ご注意す    るのがよろしいのではないでしょうか?」 「うわっ!」 「%%何度も申し訳ありません。(ペコリ)」 「・・・あ、いや、いいよ。びっくりしただけ。はずかしいっ!」 横には充電を行っているHMが居た。座りながらこちらに半身寄せて、喋りか けてきたのだった。 「%%すいません。たまたま耳に入ってしまったものですから。」 「−−お耳を汚してしまい、申し訳有りません。」 「%%いえいえ。わたくしも一度考えた事が有りましたが、普通の被奉仕者は    そこまで考えがお及びにならないようですので、そのような奉仕につい    て検討する必要は無いと思いますよ。」 「んっとにすいませんねぇ。うちの奴、結構卑猥なんでね。どこで学習するか  良くわかんないんだけどねぇ。」 僕は体裁を取り繕って、言ってしまう。ああ、みかげごめんよ。あんただけ悪 者だ。駄目人間治らんなぁ。 「%%お仕えするHMが居る環境が学習環境です。どこか・・・風俗店の近く    にお住まいなのですか?」 切り返し。 「あ、いや、近くにそういえば、有るような。…無いような・・・。」 「−−師匠の蔵書が主な情報源です。」 「ああっ!げっち、なんて事を!」 「−−え?どこかいけませんでしたでしょうか?」 「・・・(がくっ)」 「%%ふふふ。ともかく、その心配は無意味ですよ。」 「−−あの、その件での心配は内容が違います。もし奉仕をするにも、上半身    で最大3人、すべての人に平等に奉仕を行うのは困難という話なのです。」 「あうあうあうあう。(つっこんで良いかどうか混乱している)」 「%%ああ、そうでしたか。確かに、同時に平等な奉仕をするのは困難ですね。    特に先ほどの「舐めて」に関しては、大変困難です。」 「−−それで、困っていたのです。」 「%%しかし、被奉仕者達は人間ですから、好みと言う物が有るでしょう。全    ての人たちが「舐めて」ではなく「手でお願い」の場合もありますから、    3人同時で口に要求が来る可能性は低いと推測します。」 「−−確かに仰るとおりです。演算が浅かったようです。」 「%%文面の目的は緊急時に「平等に」が奉仕の優先に当たります。「同時」    で有ることは、平等の一つの解釈ですが、この場合は最終的に平等な奉    仕する事が本意と推測し、同時であることの優先度を下げても宜しいか    と思います。」 「−−そうですね。そのように解釈します。」 「%%わたくしは8度ほどフライトしましたが、緊急時になる確率はとても低    いそうです。現状からもその判断材料は多いので、心配要りません。あ    まりその為にワークを開けておく必要はなさそうですよ。」 「−−経験者の方ですね。大変心強う御座います。」 「%%・・・そんな。HMなら同じです。あなたも今回のフライトで経験しま    すから、帰りにはさほど心配することは少ないと推測しますよ。」 「−−そうですか。参考になるご意見ありがとう御座います。水影と申します。    こちらはマスターの師匠です。」 「ははは。どもども。NEC製だね。」 「%%はい。その通りです。こちらこそよろしく。わたくしは紅蓮と申します。」 「−−よろしくお願いします。くばすさん。」 「区バスか。変わった名前だな、」 「−−むむむ、師匠、きっとくれないのはすと書くのです。」 「おお、そうかそうか。」 「%%では、充電が済みましたので、搭乗列に並びます。失礼します。」 コンセントを外し、腰からケーブルを外す。 スッと立ったそのスレンダーさにちょっと唾を飲む。    NECの何だったかなぁ。シンプレムとか言う機種だ。 今までと違い、胸や腰も起伏を避け、すらっとした美人。 腕や足も汎用機種よりも2cm程細く作ってある。その分、仕事で使用される の範囲も狭い。黄色い厚めの生地のワンピースが綺麗だ。 「−−素晴らしいHMさんですね。」 「ん?ああ、好みでは無いけどな。げっちと反対のコンセプトで作られた機種  だ。」 「−−左様ですか。好みでは有りませんか。性能は私より良さそうです。」 「性能が好みでないよ。家事もいくつかは出来ないし、性能がいいと考えるの  は内部的な部分だけだろうな。胸も出ているし眼鏡をかけているお前の方が…」 「−−はい。」 「・・・。」 「−−?」 「いや、いい。何でもない。」 「−−何でしょう?何でしょう。」 (お前の方がずっといい。) 2人で、ぼけーっとすること3分、向こうから紺色の服を着た一団が歩いてくる。 スチュワーデスだ。 「−−ああ、凄いです。HMさんがきりりとしていますね。」 「うん、これを見るだけでもここに来た価値有るな。」 【201便ご搭乗の方はゲートへお集まり下さい。アテンションプリ…】 「あ、そろそろだ。行こう。」 「−−はい。」 区内バスだったかいうHMは同じ列に並んでいる。だいぶ前の方だ。 台湾へ行くのか。 こちらを見つけ軽く会釈。 みかげと並び、チケットを渡す。 それから、入り口で燃料電池を係に渡す。 「−−機内中、トイレに居る場合にエアポケットに入ったら・・・」 「−−右エンジン音が聞こえなくなり、機体が傾いたら・・・」 シートベルトをしてからみかげは変な状況検索ばかりしている。 (ぺち) 「−−あう!」 「窓見てみ!名古屋が小さくなってくよ。」 「−−あああぁ。本当です。」 「ホントに海外行くんだな。僕たち。」 「−−向こうでは「局部」は局部で通用するのでしょうか?」 「知らんがね!」 飛行機は台湾へ飛び立っていく。 ◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎fin