「−−お帰りなさいませ、上着はこちらに。」 「おお、いつものお出迎え、うれしい限りだねぇ。」 カンカンカンカン。 ガチャ。 「−−師匠、実は、お話が。」 「ん?げっち、めし今日何?」 「−−あ、御空腹で御座いますか。」 「−−はい、御用意できています。今お持ちします。」 コトン。 カタ。 「刺身か。」 「−−はい。上質の物が安売りでしたので。購入を…あっ、おみそ汁はこちら    に。」 「うむ。夏はあまり食わなかったなぁ。」 「−−はい。クーラーが無いアジト内では、少々危険な場合も有るかと思い、    秋まで待ちました。それから、お話しの事ですが…」 「そうだな。アジトで食べると大変な事になるかもしれんしな。衛生面はげっ  ちが来てからだいぶましになった方だなぁ。」 「−−当たりました。」 「へ?刺身?食ったの?」 「−−いえ。その話では御座いません。」 「どゆこと?」 「−−これを。」 「なにこれ。」 「−−当選券です。」 「???????・・・あたった?」 「−−はい。当たったのです。」 「どゆこと?」 「−−師匠、失礼かも知れませんが、情報更新の処理がループしておられませ…」 「いやいや、当たったまでの過程を聞きたいんだ。何のくじに当たったとか、  どんな当たりなのかとか。」 みかげは少し、考える 「−−むむむ、今、お話の順序を整理しています。」 「そんな、長いんか?」 「−−スタックします。少々お待ちを…、それほど長くはありません。」 「おーーい、げっちー。おーーい。」 「−−師匠が先の質問をしたことに事例編集の矛盾が生じたため、お待たせし    てしまいました。」 「なんだそれ。何言ってんだ?げっち。」 「−−それでは続けます。師匠は、先日クラッカーをお食べになられましたよ    ね。」 「んーー。食べたような、食べてないような。」 「−−食べました。・・・そのとき私は、旅行が当たるとの事でクラッカーの    紙パックの応募券を応募しても良いかとお尋ねしました。」 「あー。だんだん思い出してきたぞ。・・・それが当たったんか?!」 「−−はい。当たりました。」 「なに?なに?どこ?どこが当たったの?」 「−−2泊3日です。」 「どこさ?どこさ?」 「−−・・・。」 「げっちってば。」 「−−暑いところです。」 「沖縄?九州?」 「−−いいえ。漢字を使う国です。」 「国?!じゃ、じゃ、ハワイ?あ、漢字かー。韓国?」 「−−ああ。さすがは師匠。お話しを盛り上げるためにうまく外して下さいま    す。」 「・・・(むすっ)」 「−−誉めさせて頂いているのです。誤解の無いように。さらには、辛い料理    があります。」 「い・・・インド?中国?」 「−−私の購買意欲をそそる物もいっぱいあります。」 「???」 「−−違法コピー王国と聞きます。アドビ製の高級局部ソフトも有るかも知れ    ません!エロDVDも激安でしょう!」 「た・・・台湾?」 ◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎  30000ヒット記念SS  台湾芹緒組!   台湾へ行こうアルヨ! ◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎ バス。 「−−そうなのですか。」 バスの中で、納得するみかげ。 早朝、空が白みだし、シルエットの町の風景が窓をどんどんかすめていく。 「ふぁああ。ん、そうだ。さっきから質問ばかりして。・・・ちょっとは眠ら  せろよ。」 「−−あっ!申し訳御座いません。不安でしたので。さ、さ、眠ってください。」 ぶるるる。ききき。 ばしゅー 【名古屋空港です。お忘れ物の無いように。名古屋空港です。お忘れ…】 「着いちゃったよ。」 「−−はい。ご愁傷様です。よほど早いお人出なければこの時間では出来ませ    ん」 「ほら、荷物。何だって?何が出来ないの?おりるよ。」 「−−あ、切符は私が所持しております。・・・睡眠です。」 空港。 空がすっかり明るくなり、星が見えなくなった。 「うーーーん。」 「−−国際線入り口です。こちらから入れば良いのですね。」 「しかし、本当に海外に行くんだなぁ。」 「−−まだ油断しては行けません。薬を注射され、旅行に行ったという暗示を    かけられているかも知れません。」 「何だそれ。」 「−−(きょろきょろ)どこかに悪の結社が私の秘密回路をねらっているやも    知れません。残念ながら私の今の能力では師匠をおま…あうっ」 (ぺち) 「おいおい、暴走すんなすんな。」 「−−反省します・・・私も浮かれているのかも知れません。新しい事例に今    までのフィクション的な凡例を当てようと検索をかけてしまいます。非    現実的です。」 「まぁ、僕も初めてだしね。」 「−−初体験です!サテライトがないために事前学習が出来なく、大変不安で    御座います。」 「そういうな。今回のことで、利用できそうな部分を覚えれば良いではないか。」 「−−このような初体験では血も出ません。」 「・・・。」 「−−血が出なければ初体験だったかどうかもわか…らうっ!」 (ぺち) 「飛行機の中でゆーたら血ぃ見るでー。」 小牧の名古屋空港。 最近新しくなったか、妙に小綺麗だ。 エスカレータを上り、ホールに来る。 暫く辺りを見回す。もうすぐ7:00だ。 「げっち、8:00迄時間が有るから最終確認しよ。」 「−−はい。パスポートとかですね。」 「うむ。」 みかげと僕は、空港の隅にある、喫煙所まで行き、鞄を開いた。 僕は煙草をくわえ、火を付ける。それからみかげの鞄を持ち上げてベンチの上 に置く。 「ってゆーか、ちょっと待て。この鞄異様に重いで。」 「−−はい。」 「何で、げっちの鞄、こんなに色々はいってんだ?よく考えたら、着替え1着  と充電器、燃料電池6本で十分だろが。」 「−−前情報も少なく、色々心配でしたので・・・」 「いやいや、ちょっと、抜いて軽くしよう。」 「−−ああ、そんな。」 カップラーメン6個 「くわんやろが。」 「−−万が一、路頭に迷った場合、私は大丈夫でも師匠が心配です。」 「やめ!こんなにいらん、1個にしとき」 傘2本 「買えば良いかと思うが・・・」 「−−台湾に傘屋さんが多いとは思えません。」 「んなん、ホテルでも借りれるわ!やめ!置いてき!」 「−−はい。」 カードファイル 「トレードすんのか?」 「−−その可能性も否定できませんが、これは、フライト中に未整理分をファ    イルするためです。」 「うわっ。カードが2箱はいっとるよ!」 「−−はい。未整理分です。」 「やめ!これ置いてき!」 「−−ああ、ご無体な。フライト中の時間はどうすれば・・・」 石鹸・洗剤・ミニ鍋・包丁・箸・お椀 「・・・・・・ひ、引っ越しでもするんかい!まーかん(もう許さん)!だせ  だせだせだせっ!」 ガラガラ 「−−ああっ!これでは、何の為の旅行か本末転倒で…あうっ!」 「それ以前に、検問通らんて!」 衣紋掛・団扇・小麦粉・あさげ・灰皿・生CD・エロゲCD・マウス・ゴムひ も・トルクレンチ・ジッポオイル・スリッパ・マジック・beepメガドライ ブ・風呂敷・靴磨き湖・靴べら・カードスリーブ・HM用USBFDD・着替 え4着・リトマス紙・アロンアルファ・下敷き・分度器・本立て・唐揚げ湖・・・ 「・・・良くもまぁ、これだけ関係ない物を詰め込んだな。」 「−−判断上必要度の高いと推測される物品を選んだはずですが。」 「んなわけないだろこりゃ。・・・・ん?・・・・・」 「−−どうか致しましたか?」 「げっち、荷物これだけか?」 「−−いいえ。こちらのリュックの方に、貴重品が格納してあります。」 「・・・開けて出してみ。」 「−−・・・。あの、なにぶん…プライベ…」 「出してみ。」 みかげ、ゆっくりと背負っていたリュックを開ける。 1品ずつ順番に出してく。 HM用パスポート 「ふんふん。」 財布 「ふんふん。」 貴重品書類入れ 「おう。」 タオル 「ふむ。」 急速充電器 「ふんふん。」 システムバックアップCD 「ふんふん、それから? 燃料電池注入ポンプ 「ほうほう。」 コーキングセット 「ふんふん。」 「−−・・・・。」 「どうした。出してみ。」 (ふるふる)コンドーム 「・・・・・・な・・・。」 「−−・・・。」 眼鏡をずり落とし、しゃがんだ状態でこちらを見上げるみかげ。 その眉は悔しいような悲しいような怒っているような。 口は横一文字だ。 「なんだそれ!」 「−−大変悔しいお話しでは有りますが、台湾では、私が至らない奉仕をして    頂ける店も有る可能性が高いとの情報を手に入れ、よもや師匠が性病に    かからぬ・・・はうっ!」 (びし) 「行くわけないだろ!そんなとこ!何いってんだ。もーっ!」 「−−ええっ!本当で御座いますか?」 「本当も本当!大体げっちと旅行行くのに、女買いに行くか!お前と旅行楽し  むためだろが!僕はげっちと観光に行くんだよ!」」 「−−し・師匠・・・・師匠!…あっ!」 (びし) 「寄るな!叫ぶな!んとに。」 みかげ、床に腰を落とし両手を胸の上で合わせる。 「−−ああ、嬉しゅう御座います。旅行の目的を提示されなかったので、てっ    きり言いづらい内容かと予測し、私が勝手に配慮しました。」 「はいはい。わるうござんしたよ。」 「−−いえ。今の表現がうまく出来ませんが、内部演算のある1つのルーチン    を破棄しました。ほっとしたと表現して良いかと推測します。」 「さ、そんなとこ座らずに。」 僕はそう言いながら、みかげに少し惚れ直していた。 「さ、残りの荷物出して。」 「−−これで全部で御座います。あとは、インチネジ20本ほどです。」 「え?」 「−−はい?」 「ね・・・」 「−−ね?」 「燃料電池は?」 「−−むむむ。」 「見あたらんよ。」 「−−玄関の脇に有ります。」 「がくっ!」 「−−ああ!申し訳御座いません。申し訳御座いません。」 もう一度床にひれ伏すみかげ。 たまにHMがぺこぺこ謝っているところを見る。 なんであんな事させるのかな、と思っていたが、HMを買ってやっと解った。 HM達が自らやるのだ。HMは失敗なんて少ないと思っていた。それでも人間 と比べると、ずっと少ないんだけど。 空港に活気があふれ出し、人が続々と入ってくる。 大きなホールはどこかの会場のような人の雑踏の響きがする。 むこうは日本よりHMが普及してると聞くから燃料電池が買えないことは無い とは思う。 ちょっと心配かな。 「まぁ、まぁ、そう落ち込まんと。」 「−−はい。ありがとう御座います。」 「ともかく、袋にいらんグッズ詰めて、コインロッカー入れよう。」 コインロッカーに荷物を詰め込み、殆ど空になったみかげの鞄を持ち再びホー ルに戻る。向こうのゲートでは、続々と出国手続きを行うための列が並んでい る。 「げっち、HMパスポート見せて。」 「−−はい。」 「どれどれ・・・うん、うん、ここも書いてあるな。僕のもげっち確認して。」 「−−はい。・・・確認しました。正確に記入されています。」 僕は大きく息を吸い込む。 みかげも合わせて深呼吸する。 「あれ?」 「−−空冷措置です。私も落ち着きました。」 いよいよ出発だ! ◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎fin